第十二章  お姉ちゃんたち、弟と妹だよ

オス猫が欲しいと思ったのは、チョビがオスで『んがお』家のボスだったのが不在になってしまったからです。では、なぜ兄弟猫が欲しかったかと言えば、お姉ちゃん二匹はすでに7歳をこえていて、子猫が来た時にやんちゃなパワーに参ってしまわないか、同じ年齢の兄弟を貰えば、その二匹で遊んでくれて、お姉ちゃんたちの穏やかな老後を邪魔しないだろう、という思惑があったからです。

さて、そういう理由と経緯から『んがお』家に貰われて来たムサシとスズカ。1997年12月31日というまさに大みそかに新しい家に到着しました。夜に家に着いたので、大きめのケージに二匹を入れて一晩すごすことにしました。留守番していたうえに新参者が来てショックが大きいであろうスズカとフジコの心のケアをたっぷりしてやるためにと子猫たちを慣らすためにそっとしてやるという意味もありました。しかし、檻のなかだと、騒ぐ騒ぐ。落ち着くようにかけてあげたバスタオルをメチャクチャにしてしまったりして、かえってお姉ちゃんたちも落ち着かなくなってしまいました。仕方なしにケージから出してやるとテーブルの下にしまわれている使っていない椅子の上に二匹で陣取りました。我々の寝室は二階ですが、チビどもはその場にほおっておこうということになり、ペット用の暖房具にカラオケ店からもらってきたバスタオルをまいて、とりあえず就寝しました。
お姉ちゃんたちはといえば、新参者よりも飼い主が戻って来たことのほうが大切だったようで、彼らをすっかり無視して我々と二階でおやすみです。
翌日からは正月ということもあって、いつもより猫たちといれることがよかったのか、ムサシもミユキもお客さんのたくさん来るカラオケ店の猫だったのがよかったのか、子猫たちは部屋の隅に固まることは全くなくなり、夜も二階で寝るようになりました。
お姉ちゃんたちとの相性は、けしてよくなかったと記憶します。
特にミユキが同じメス猫ということもあって、子猫のわりには気が強く大猫のスズカやフジコにもパンチを食らわしすっかり嫌われていました。ムサシは当初ぼーっとした性格のようにみえて、すぐに先輩からなめてもらうなど世話をしてもらうようになりました。
いつか4匹一緒にいるところを写真に撮ってカラオケ店に送ろうと思って構えていたのですが、彼らが猫だんごになって寝るようになったのは、二週間がすぎたあたりからです。
その間、我々人間は何をしていたかというと、とにかくお姉ちゃんたちに声をかけ、撫でまくり、子猫がものすごく可愛くてもお姉ちゃんたちを一番にすることを心掛けました。それは今でも変わりなく、ご飯をあげるのも何をするのもお姉ちゃんたちが先です。
その甲斐あってか、お姉ちゃんたちとチビたちはものすごく仲が悪くなることもありませんでしたが、そこは猫、ベタベタ仲良くなることもありません。しかし、新参猫の加入で体調を崩す先住猫がいるという話も聞くので、ムサシとミユキの仲間入りは大成功だといえると思います。
貰って来た当初、ぼーっとした性格だと思われていたムサシがだんだんさすがオス猫というやんちゃぶりを発揮するようになり、かわって、凶暴猫だと思われていたミユキが実はぽわんとした性格だったと半年くらいたって分かるようになってきました。
新しい猫の言っていることがわからない、というのは、よく猫コミックなどで著者が言っているのですが、ムサシとミユキの場合も彼らがなんと言って何を要求しているのか全くわからず困りました。しかし、半年もたつとお互いにお互いのことが分かってくるものです。人間がそうなのだから、猫たちも時間をかけてお互いの距離をつかんでいったのだと思います。今では、ムサシが時々三匹の猫にケンカをふっかけるくらいで、とても平和です。
ところで、7歳以上のいわば老猫と1歳未満のいわば幼猫と一緒に飼うというのは非常に大変だと実感しました。スズカとフジコはかなり体重が重く、ローカロリー食を与えていたのですが、まさかムサシとミユキにローカリーというわけにはいきません。子猫の時の栄養のとりかたが寿命を大きく左右すると聞かされていたので幼猫食を与えるようにしました。しかし、お互いがお互いの食べ物のほうが美味しそうに見えるのでしょう、自分たちのごはんを食べないで相手のを食べたがります。ご飯の時はとにかく目を離さずにいなければなりませんでした。いつでも食べられるようにしておいているカリカリは獣医師の意見を聞いて子猫のほうを重視して普通食を出すようにしました。その後、スズカもフジコも爆発的に太ったわけではないので、結果オーライです。たぶん子猫が来て、年寄りばかりだったころよりよく運動するようになったのもよかったのだと思います。
そんなこんなで猫4匹の生活に、人も猫も馴れていきました。
     最終章  のっぷぴは続く   につづく。

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