第一章 蝶よ花よ、チョビちゃんよ
動物病院の保温機の中に入っていた子猫は、モモと同じ時に生まれた兄弟とは思えないほど大きくて、しかもチョビひげのような模様のある子猫でした。 直感的に名前は『チョビ』に決定してしまいました。 さて、『んがお』さんちに来たチョビですが、前の飼い主から戻された理由の粗相は、ちっともしませんでした。どうも前の家には、先住猫がいて、それが粗相の原因だったらしいです。あと、猫のトイレの砂が、彼は流せる紙の砂よりも鉱物質の固まる砂が好みだったらしく、それに変えて以来、病気の時意外は全く粗相しませんでした。 待望の健康な猫が来たのがうれしくて、『んがお』Rさんは、それはそれは大切にチョビを育てました。 今度はヤマトの時のような失敗はしないように、猫の育児書と首っぴきで、しかし、甘やかし放題に甘やかして育てたのでした。 一緒に寝るのは当たり前。『んがお』ダンナさんと、Rさんの間には常にチョビがいます。 ご飯を一緒の食卓でとるのも当たり前。Rさんのおかずの半分はチョビの口に入ります。 おいしそうな猫のおやつ、にぼし、かつおぶし、なんでもチョビのために買われます。 猫のおもちゃもあらゆるものが揃います。 そのお陰て、チョビはかなり我がままに育ちました。 夜中でも遊びたい時は、にゃーにゃーと騒ぎます。当時アパートに住んでいた『んがお』さんちですので、さすがに困りました。 子猫のこと、迷っては大変なので、ひもをつけて外に出したりもしました。 最初は室内飼いにするつもりはなかったのですが、その後風邪をひかせてしまい、これがどんな薬でも治らずに、『国分寺動物病院』の先生方を困らせ、1カ月も入院するはめになったので、外出はさせないようにしました。この風邪は、最終的にペニシリンという一番古い風邪の薬で治ったのですが、先生の言うことにはチョビは免疫が弱いとのことなので、できるだけ病原菌から遠ざけたほうがよさそうです。選択の余地なく、チョビは完全室内飼いになってしまいました。 免疫が少ないとはいえ、チョビは、多少の皮膚病を患っただけで、元気に育ちました。さすがに赤ちゃんの時ほかの兄弟よりオッパイをたくさん吸って2まわりも大きくなっていただけあって、体力はあったのでしょう。 とにかく、蝶よ花よと育てられ、我がまま放題のチョビでしたが、ある日、彼に晴天の霹靂が襲いかかります。 第二章 黒い稲妻来る に続く |
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