第二部 第六章  どうしてもダメなこと(ごめんね、ゆっきょん)

 ぷーちゃんが亡くなった時にはなかなか次の猫を飼う決心がつかずにいた我が家ですが、カッパ姉ちゃんが亡くなった後の行動は早かったです。すぐに新潟動物ネットワークのホームページで新しい猫の候補を探し始めました。
決してカッパ姉ちゃんに対して薄情であるとか思わないで欲しいです。
ぷーちゃんの時の経験からして、我が家には4匹猫がいないと落ち着かないと分かっていたからなのです。
猫は20年生きます。その猫を死ぬまで安心して幸せで生きていられるように責任を持つとなると、私たちにはそれほど時間がないのです。
我が家では「世話をする人間の腕の数だけの猫を飼える」という、一番初めにお世話になった動物病院の先生の言葉をきっちりと守るつもりなので、4匹が限度です。猫を世話できる年齢が75歳くらいまでだとしたら、あと何匹もの猫の面倒は見られないのです。
それから、現実問題の時間の制限もありました。季節は6月。猫は特に夏の暑さには弱い動物なので、もし新入りが環境に順応できずその上暑さにもやられたら大変です。真夏になる前に我が家に慣れてもらう必要がありました。
カッパ姉ちゃんが亡くなって3週間した木曜の夕方に新潟動物ネットワークの方が連れてきた猫は、シャムの血の混ざったスリムな子でした。生後6ヶ月以上1年未満の大人と子供の中間くらいのメス猫というのは、我が家の猫導入の条件でもあります。
あまりに子供すぎる猫は育てるのに心配だし、あまりに大人すぎる猫は先住猫との折り合いが心配です。またオス猫は縄張り意識の強いムチャがいるので、絶対に無理です。シャム似の猫はその条件に合致して、何より私が欲しかった白っぽい毛の猫だったのでした。
ただ、実はぷーちゃんのようなのんびりした大人しい猫が欲しかったのですが、ホームページに載っていた写真とはちょっと印象が違ってとてもシャープな猫でした。声もシャム独特のダミ声。
動物ネットワークの方が人間にあまり心を開いていない猫で、人見知り猫見知りする子だが、一時保護の預かり主さんのもとでは先住猫と折り合いよくやっていたと教えてくださいました。
我が家ではどうだろうか、気になりました。
とても賢そうな表情をする子で、青い目が印象的でした。白い毛と青い目から雪子と名づけました。
呼び名は、ゆっきょん。
ただその子は本当に人見知りをする子で、最初の日も次の日も我々に触れさせませんでした。納戸にしている小さな部屋に入ったきり出てきません。
さらに、先住猫と接触するとものすごく大きな声で威嚇し叫び声をあげます。それどころか敵意を持って追い掛け回します。
普通なら新入りの猫のほうが追い掛け回されて当たり前なのですが、この子は自分の身を守るために捨て身で自分より大きな猫に向かっていくのです。
自分がボスであると自負しているムチャがまず気に入らなかったようです。毛が飛び散るような大きな接触が何度もありました。
それから、大声と態度がキャラ子には脅威だったようです。
キャラ子が新入りだった頃にも態度は大きかったと思うのですが、これほど攻撃的ではありませんでした。
近づくもの全てにゆっきょんは攻撃しました。
キャラ子はすっかり怖気てしまい、家具の下に潜り込んで出で来なくなりました。怖い怖いと情けない声で家具の下でなくようになりました。
ミユキも追いかけられて、自分のテリトリーだったはずの2階から追い出されました。
家が殺伐としてきました。
ゆっきょんが乱暴な猫だったわけではありません。ただ、自分を守る意識が攻撃として出てしまったのだと思います。野良猫から保護された猫で、野良猫時代にどんな経験をしたのか分かりませんが、本当は人間に甘えたくて仕方がないというのがチラチラと見てとれました。
力いっぱい頭をこすりつけて甘えても来ました。
ゆっくりゆっくり時間をかけてゆっきょんの心を解きほぐしていけば、きっと賢いよい子になるだろうと分かりました。けれど、我が家ではそれができる環境ではありませんでした。
他の先住猫たちがゆっきょんの自分を守るための攻撃性を引き出してしまいます。
それに、何より、私は私とずっと暮らしてきた猫たちのほうが大切でした。
どちらの猫のことを思っても、ゆっきょんは我が家にいないほうがいいと結論づけられました。
その間二週間、悩みに悩みました。これほど心が屈折した猫に出会ったのは初めてで、それが分かるからなおのことゆっきょんの力にもなってあげたかったのです。でも、我が家では無理だと分かってもいました。
悩んで泣いて揺れ動いて、結局まだ仮譲渡の段階だったので動物ネットワークにお返ししたのでした。
その後、ゆっきょんが理解ある飼い主の方に貰われて行けたかどうかは定かではありません。ただ、動物ネットワークに保護されたからには、野良猫に戻ることも無いと思っています。
ゆっきょんの一件に関しては、私にものすごい挫折感を与えてくれました。
季節はもう真夏に突入していました。
我が家に新しい猫を迎え入れるとしたら、先住猫が怖がらない本当に幼い猫以外になくなってしまったからには、真夏は無理です。秋までじっと待つつもりになっていました。
そうすれば、きっと先住猫たちの心の傷も癒されるでしょう。
しばらく3匹の生活が続きそうでした。
 ゆっきょんについての詳しいことは、ブログのっぷぴ母日記のカテゴリー「ゆっきょんのこと」をご覧下さい。当時の私の心境がつづられています。
                  
        第二部 第七章 豆ちょ参上 につづく
もくじに戻る
つつぎへ
秘密写真館Part7へ
トップに戻る