第二部 第七章  豆ちょ参上

 新しい猫導入に失敗し、飼い主も猫たちも心に傷を負いました。
暑い夏は3匹体制で行こう、と決心していました。
ところが、新潟動物ネットワークに里子募集として登録していたために、譲渡会の連絡が来てしまったのでした。それも、自宅のごく近く。
正式には新潟動物ネットワークの譲渡会ではなくて、会員さんが所属している別の団体の譲渡会なのですが、猫を探しているのであれば見に行ってみてはどうでしょう、とのこと。
秋になるまで子猫を探すつもりはなかったのですが、家の近くだったし、せっかく誘ってくれた方の立場もあるだろうので、顔だけ出すつもりになりました。
8月末の雨の降る日曜日、譲渡会のある小さな体育館に行ってみました。
小さな体育館のほんの一角にケージが15ほど並べられていました。
とても人のよさそうな人たちが回りにいて、猫を見に来ている人も数人いました。
ケージの中には元気のいい子猫が2〜3匹入れられていました。
本当にその日は猫を貰うつもりはありませんでした。
でも、目の前に子猫がいてごらんなさい。抱かせてもらってごらんなさい。あっという間にどの子がいいかしら、という気持ちになってしまうものです。
譲渡会の主催の方も家に先住猫が3匹いること、1匹新入りを導入しようとして失敗したことなどを話すと、とても親身になってどんな子がいいのか考えてくださいました。
大きくなりかかった猫がダメだったのであれば、離乳とトイレのしつけの終わった赤ちゃん猫しかないだろう。少しの間、ケージの中に入れて、どちらも慣れさせるようにすればいいのではないか、とアドバイスもいただきました。
見ると、譲渡会に連れられて来た猫たちはほとんどが赤ちゃん猫でした。聞くところによると、2004年の中越震災の時に遺棄された飼い猫たちが子供を生み、魚沼地方は野良猫が急増しているとのこと。そこから保護してきた子猫たちが多いのだそうです。
ただ、我が家に猫を導入するにあたって、先住猫に何がしかの病気がうつっては困ります。その検査が済んだ猫がいいとなると、子猫では無理でした。猫エイズの血液検査は赤ちゃん猫では陽性か陰性かはっきりしないのだそうです。
とはいえ、目の前にはとても元気な子猫がいました。
猫エイズの検査はしていないが、その他の健康診断はすべてクリアした猫たちでした。
主催の方々のとても熱心な様子と、これほど沢山の猫たちが飼い主を求めている現状を目の当たりにして、力になりたいとも思いました。我々にできることといえば、この中から1匹我が家に迎え入れることなのでした。
ところで、30匹近くいる猫たちの中で、よりどりみどりというわけにはいきませんでした。
我が家にもメス猫でなければならない、という条件がありました。それに、ゆっきょんのように気の強い猫では我が家の狭量の猫が受け付けません。それから白い毛の多い猫がいいという私の好みもありました。
白い毛の多い猫は、意外とカッパ姉ちゃんに似た子やぷーちゃんに似た子が多いのでした。そのどちらも、今は避けたい模様でした。となると、三毛猫か白茶の猫しか選択肢がなくなるのでした。
最終的に2匹の三毛猫が候補になり、どちらがいいという段階になって、大人しそうな子よりも元気のいい子丈夫そうな子を選びました。
その子は頭に保護するときに頭に大きな傷を負っていて、今はカサブタになってハゲている状態でした。預かっている方はその様子を見て「河童」ちゃん、と呼んでいたそうです。
カッパ姉ちゃんを亡くして、「河童」ちゃんに出会うのも何かの縁のように思えました。
その日のうちに子猫はカリカリと猫の食器つきで我が家に来ました。もし先住猫と折り合いがつかなければいつ戻してもいいと言ってくださいました。それだけで気持ちが楽になりました。
とても猫たちの保護と譲渡に熱心な方で、全て手弁当でやってくださっているのです。頭が下がりました。
そんなこんなで、8月終わりの日曜日、朝には考えてもいなかった子猫が我が家にやって来ました。
じっと顔を見て、30分も考えて、それでも名まえが思いつかなくて、手の肉球のひとつが黒くて豆のようなので、豆子にすることにしました。
小さな豆子はしばらくケージの中で過ごすことになりました。小さいので、トイレも小さなタッパーを利用してケージの中に入れておきます。とても元気な子なので、出してくれとうるさいのですが、まず先住の子たちにこういう子がいて危害を加えないのだという認識をしてもらわないといけませんでした。
しかし、ゆっきょんの時のように大人猫たちは警戒しませんでした。きっと豆子が赤ちゃんだったからだと思います。あれほどゆっきょんと血をみるような喧嘩をしたムチャも小さな豆子をどう扱ったらいいのか困ったそぶりを見せますが、敵意は見せません。ゆっきょんをとても怖がっていたキャラ子も小さな豆子を怖がりませんでした。
1週間、就寝時と仕事に行っている間はケージの中で過ごしてもらいましたが、出している時もトラブルらしいトラブルはありませんでした。
これなら大丈夫。すっかり豆子は我が家の一員です。
正式に譲渡していただき、予防接種も済ませました。血液検査も陰性でした。
これで、我が家に猫が4匹になりました。ようやく、開いた穴が埋まった感じでした。
                           
第二部 第八章 子猫をしつけるということ につづく
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