第四章  拉致された緑の目

チョビとスズカが慣れて、なんとなくむつまじくなった頃、国分寺の『んがお』家の窓の外の塀に小さな影が現れるようになりました。
磨りガラスなもので、そく見えないのですが、いつも塀の上を歩いていく野良猫の大きな影ではありません。
裏の掃き出しの窓は網戸をつけて開けてあるので、注意して見ていると、いました。ちょうどスズカと同じくらいの年頃の猫が、裏の小母さんちの外飼いの猫のエサを狙っているようです。
ふと、目があって、『んがお』Rは、あっと声をあげました。緑なのです。瞳が緑色。柄はよくある雉縞なんですが、目が緑色でとても奇麗なのです。
つぎの瞬間『んがお』Rは、チョビたちの餌を網戸の外に置いていました。
よほどおなかがすいていたのでしょう。子猫はすぐに食いついてきました。チャンス。思いのほか簡単に緑色の瞳は手の中におさまりました。もしかしたら飼い猫だったのかもしれません。ほとんど抵抗せずに、しかも抱かれて喉をならしています。
すぐさま洗って、家にあった蚤取り首輪をつけ、国分寺動物病院に走ってワクチンを打ってもらいました。
はたして、ダンナが帰宅して、3匹は多すぎる、ということになりました。動物病院でも、『んがお』さん、また拾っちゃいましたか、と飽きれられたくらいです。チョビがスズカに慣れるまで時間がかかったことを考えると先住の2匹のほうが大切だろう、ということで、貰い手を捜さなければならなくなりました。
しかし、意外に簡単に貰い手はみつかりました。友人の会社の同僚が子猫を欲しがっているとのこと。
仮にフジコと名付けた子猫は、拉致されて3週間ほどで同僚の手に渡りました。
彼女がいなくなった夜。なぜか『んがお』Rは、ポロポロ泣けました。すっかり情がうつっていたのです。
考えてみればフジコはチョビとはとても相性がよくすぐに一緒に寝るほどになったっけ。スズカともすぐに友達になったっけ。彼女だけ布団にはいるとモミモミしたっけ。
でも、3匹で飼われるよりは1匹で可愛がられるほうが彼女のためだと自分に言い聞かせました。
また、『んがお』家は、チョビとスズカだけになりました。
ところが、しばらくして、フジコの貰い先から電話がかかってきました。なんと、貰ったはいいけれど、猫毛アレルギーだったことが発覚して、どうにも飼うことができなくなってしまったとのこと。
『んがお』Rが喜んだのは、言うまでもありません。
もうダンナも文句は言えません。
フジコは、猫トイレと猫缶のオマケつきで戻ってきました。
2度目のワクチンは、先方で打って貰ったし、晴れてうちの3番目の子です。
わが家の猫がつける革の首輪、チョビには青、スズカには赤をつけている首輪と同じ黄色い首輪を彼女につけてあげました。
これがフジコ、『のっぷぴ』の『ぷ』が『んがお』家に来たいきさつです。


                            第五章  なんで『のっぷぴ』?  につづく
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