第7章  じいちゃんとばあちゃんは優しいよ

新潟の古い家に引っ越して来た東京の猫の『のっぷぴ』たちは、しかし、自分たちが田舎に来たという自覚はたぶん無かったと思います。
と、いうのも新潟の両親に厳重に猫を外に出すな、と言っておいたからです。
両親にしてみれば、猫は自由に外に出る動物だし、家は鍵もかけずに玄関は開けっ放しにしているものだし、さぞ窮屈な同居人が増えたと思ったことでしょう。
それでも、なんとかこの約束は守って貰えて、『のっぷぴ』たちは、ぬくぬくとした室内で暮らすことになったのでした。
さて、国分寺のアパートと新潟の家との違いは、といえば、階段があるということです。実は新潟の実家では、んがおRが高校生のころ飼っていた猫が病気になり、階段から落ちて、さらに病気が悪化したらしいという過去があります。ですから、けっこう階段のある生活に不安はありました。それに、なんといっても『のっぷぴ』たちは、そろいもそろってオデブです。足がもつれて、落ちやしないかと心配は尽きません。しかし、犬じゃあるまいし、その心配は無用のものでした。むしろスペースが広くなって、とても嬉しかったと思います。
次の心配は人間です。ずっとんがおRとダンナしか知らなかった猫たちが実家の両親とどう付き合っていけるか。母はもともと猫好きの人なので心配いりません。父は、これも実は小動物が大好きなので心配はいらないはずです。問題は猫の側で、特に捨て猫のころ人間にいじめられた記憶があるらしいぷーちゃんが両親になつくのだろうか。ものすごく心配でした。
ところが意外なことに真っ先に父に、そう、がさつで手荒い父に一番最初になついたのがぷーちゃんだったのでした。謎はすぐに解けました。猫に人間の食べ物を与えるべからずと厳命しておいたのに、父はこっそり酒の肴をあげていたらしいです。ぷーちゃんは食いしん坊なので、父のそばにチンと座って、おこぼれを期待していたのでした。
チョビはボスですので、ほかの2匹を守るためにも常にリビングにいて、冷蔵庫の上から見張りを効かせていましたし、スズカはどういうわけか母になつき、一緒に合唱するようになっていました。
事件といえば、水冷型の大きなクーラーのファンが回っているのに気がつかないでスズカが突っ込んで、鼻の先に怪我をしたくらいです。その傷は今でもあります。
実家には約1年ほどいましたが、粗相もせず、たいへんいい子の『のっぷぴ』たちでした。
多頭飼いの室内飼いだと、意外と新しい環境にもなれやすいのだと感じた1年でした。
                第八章  ついに『のっぷぴ』のお城だ  に続く

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